外壁塗装では、外壁や屋根だけでなくベランダも同時に点検することがありますが、このベランダやバルコニーも、外壁や屋根と同様に常時雨や紫外線に晒されている箇所ですので、劣化を放置すると建物の耐久性低下に繋がりかねません。

この記事では、ベランダの劣化症状やメンテナンス方法を解説しながら、ベランダ防水を外壁塗装工事で行うべきメリットについてもご紹介します。

外壁塗装でバルコニー(ベランダ)も点検すべき理由

「ベランダ」とは建物の2階以上のフロアに設けられた、屋根や庇つきが付いている屋外に突き出したスペースのことで、屋外に突き出しているスペースのうち、屋根が付いてないものは「バルコニー」と呼ばれることもますが、この2つはたびたび同じスペースとして扱われることがあり、屋根が付いていない部分をベランダと呼んでも工事に支障はありません。

リフォーム会社によってはベランダのことをバルコニーと呼んだり、バルコニーやデッキの防水工事をまとめて「ベランダ防水」と呼んだりすることもあります。

1.ベランダの劣化症状

雨が吹き込みやすいだけでなく、雨が逃げにくい構造(屋根のように斜めになっていない)になっているベランダは、床面や手すりが水分で徐々に劣化し、ベランダ床面の耐水性が失われると、ベランダと隣接している外壁や室内まで漏水し雨漏りの原因になってしまいますので、ベランダの防水性は非常に大切です。

防水層のはがれ

ベランダは塗装またはシートで表面に防水処理が施されており、戸建て住宅では塗料を使った防水処理、マンションや鉄骨構造の建物の屋上ではシート防水であることが多いです。


従ってベランダの防水層が剥がれているときは、

「表面のトップコート塗料だけ剥がれている状態」
「トップコートの下の防水シートまで剥がれている状態」

の2パターンいずれかであることが考えられ、どちらの状態になっているかで施工方法や施工価格も異なるため劣化症状は施工業者に正確に見極めてもらう必要があります。

手すりなどの鉄部の錆び

ベランダの手すりや天面をカバーしている「笠木(画像の塗装をしている部分)」には金属が使われていることがあり、住宅の中で金属が使われているパーツは外壁塗装では「鉄部」と呼ばれます。

鉄部は通常、表面が塗装で保護されていますが、紫外線や雨などで塗膜が劣化すると、塗膜の下にある本体の金属部分に錆びが生じるようになり、そのまま膨れや穴が空くレベルまで錆びを放置してしまうと、手すりに体重をかけた時や強い風が吹いた時などに折れて事故やケガに繋がる恐れがあります。

また、錆びが垂れると外壁やベランダ内側に赤茶色の筋が伸びるようになり、外観の見た目も悪くなってしまうでしょう。

先述の笠木にはベランダの壁面や内部に入り込もうとする雨を受け流す役割があり、通常は防水加工されていますが、錆びてしまうとベランダ本体を雨から守れなくなってしまいます。

従って、鉄部を含むベランダの防水リフォームでは、ただ表面を塗装するだけではサビが再発してしまうため、塗装などの処置を行う前にケレン作業で鉄部の錆びを確実に落としておき、そのあと防錆塗装や塗装による防水処理に進む必要があります。

カビやコケ

ベランダの床面のうち手すりに近い方は日当たりが悪いため影になりやすく、カビやコケが発生することがあり、カビやコケが生えたベランダは黒ずんで見た目も悪く、カビの臭いが充満して衛生的にも良い状態ではないため、素足でベランダに降りることに抵抗を感じるようになるでしょう。

床面の水たまり

通常、ベランダの床は雨水が溜まらないように排水口に向かってわずかな勾配が付けられていますが、建物の歪みやベランダに置いた家具、床面に敷き詰めたウッドデッキなどの影響で水はけが悪くなると水たまりが生じるようになってしまいます。

あるいは、建物や床面に異常がなくても、ベランダ床面に設置されている排水溝や排水口と繋がっている樋の中に枯葉やゴミなどで詰まって雨水が流れず、床面に溢れてきて水たまりを作ってしまうケースもあるでしょう。

これらの水たまりは塗装では根本の原因を解消することはできませんので、大工工事や左官工事でベランダの勾配を調整する必要がありますし、ベランダ床面が大量の水に長時間晒されて腐食し防水機能が低下している可能性があるため、ベランダの防水工事も視野に入れなくてはなりません。

雨漏り

ベランダの防水シートや塗料が劣化すると、ひび割れや防水層の隙間から水がしみて階下への雨漏りを引き起こすことがありますし、この雨漏りがベランダ下の軒天でカビや塗料の膨れなども引き起こすだけではなく、木造住宅の場合は軒天の内部で垂木や梁の腐食が生じる場合もあります。

建物の構造内部が水分で腐食してしまうほど劣化が進んでいる場合は、ベランダ周辺のサイディング材などの外壁材をいったん解体し、外壁内部に貼られている防水シートの張り直しや外壁下地の補修、あるいは外壁材そのもの交換という大規模な改修工事が必要になってしまい、解体費用や産廃処分費用が発生して防水工事の5~10倍近い費用が発生する恐れがあります。


2.ベランダ防水工事は外装リフォームのタイミングと合わせやすい

外壁塗装工事においては、外壁と屋根の塗装や補修リフォームはできるだけ同時に行うことが推奨されています。

理由としては、外壁と屋根の塗装工事では足場の設置や養生といった塗装前の付帯工事が発生するため、外壁と屋根の塗装をまとめて行えば付帯工事も1回にまとめられ、何度も付帯工事の費用を発生させずに済むというものがあります。

また、外壁と屋根を同時にリフォームすると耐用年数を揃えられますので、次回以降のリフォームのタイミングがばらばらにならず、外壁と屋根の両方を同じタイミングで定期的に補修できるようになるということも、同時に塗装すべき理由のひとつです。

一方、ベランダは足場設置の必要がありませんので単独で施工することができますが、外壁や屋根とセットでベランダの防水リフォームもまとめて済ませておくと、外壁、屋根、ベランダ三箇所のメンテナンスのタイミングを合わせることができるようになりますし、建物全体のリフォーム周期がさらに一度にまとまれば、次回の費用やスケジュールをより予測しやすくなるでしょう。

その他、外壁や屋根工事とセットで防水リフォームを依頼しておいた方が良い理由としては、もし外壁や屋根で行っている作業が天候や塗料の乾燥時間などの理由でストップしても、その間ベランダで行える作業を進めれば、作業時間の無駄をなくすことができスケジュールが伸びにくくなるなどのメリットもあります。

また、もし施工箇所に劣化や不具合が生じた時でも、外壁・屋根・ベランダの保証期間も揃いますので、どこか一か所に生じた不具合でも建物全体を見直してもらうことができ、手厚いアフターケアを受けられるようになります。

ベランダ防水工事の内容

ベランダメンテナンスの主な内容はベランダに防水層を作ることですが、その他にもベランダの傷み具合に応じた適切なメンテナンスや防水剤が存在しまので、ご自宅のベランダに必要なメンテナンスの種類を調べておきましょう。

1.防水リフォームの方法は4種類

ベランダなどで施されている防水構造を大きくわけると、

シートを使って防水層を作るもの…シート防水工法、アスファルト防水工法
塗料で防水層を作るもの…ウレタン防水工法、FRP防水工法
となります。

それぞれの工法ごとに作業内容や使用する防水材料が異なるたけでなく、施工後の耐久性や施工にかかる費用にも違いがありますので、ご自宅のベランダに現在どの防水工法が使われていて、どのような劣化が発生するかなどを簡単に把握しておきましょう。

FRP防水工法

FRP防水工事も塗料を使って行う防水工事で、戸建て住宅では最も主流の防水工事です。

まず床面の汚れや古い防水層を除去し、塗料が密着しやすいように下塗り材を塗布し、下地の準備ができたら

防水塗料の塗布
FRPマット(ガラスマット)貼り付け
防水塗料の塗布
の流れを1回、または2回繰り返して防水層を作っていき、最後に表面に着色塗料を上塗りし、床面を滑らかに調整したあとトップコートを塗って防水工事は終了となります。

FRP防水では防水用ポリエステル樹脂系の防水用樹脂塗料だけでなく、ガラス繊維強化プラスチック(ガラスシート)も敷かれますので、紫外線や雨水に強く高い耐候性と強度を備えた防水層を作ることができます。

また、FRP防水層には「重歩行性」も備わっています(重歩行性とは車などの重いものが乗っても耐えられる基準のことで、FRP防水層は駐車場の床面に施工しても耐えられる強度がありますので、戸建て住宅のベランダだけでなく、ビルの屋上にも施工が可能です。)。

またガラス繊維シートは曲げやすく施工しやすいため、複雑な形状のベランダでも施工しやすく、軽いため建物に負荷をかけずに防水性能を高めることができます。

シート防水工法

シート防水工法は樹脂製やゴム製のシートをベランダの床面に転圧して仕上げる防水処理で、シートを使った防水工法は様々な種類があり、「塩ビシート防水」「塩化ビニールシート防水」「ゴムシート防水」「合成ゴム系シート防水工法」をまとめてシート防水と呼ぶことがあります。

まずベランダ床面の汚れを高圧洗浄で落とし、プライマーと呼ばれる下地材を塗布して防水シートを張りつけます(防水シートの貼り方でも名称に違いがあり、防水シートを接着剤で張り付ける工法は「接着工法」と呼ばれ、ディスクヒーターと呼ばれる加熱装置を使ってシートを熱で床面に押し付ける工法は「機械的固定工法」と呼ばれます。)。

シート層をベランダ床面にしっかり密着させたあとは、シート同士の隙間にシーリング材を打って防水層が完成します。

なお、塩化ビニール樹脂シートを使ったシート防水工法の場合は、シートの周りにシーリング材を打った段階で工事は完了ですが、ゴム製シートを使ったシート防水の場合は、このあとさらに表面にトップコートを塗装して完成となります。

アスファルト防水工法

アスファルト防水とは、アスファルトのシートを高温のバーナーや接着剤を使って、ベランダや屋上に貼って仕上げる防水工法ですが、このアスファルト防水工事は戸建て住宅で行われることはほとんどなく、鉄骨造の建物の屋上で行われることの多い工法です。

アスファルトシートには、トーチバーナーという器具でアスファルトを高温で炙って接着させる「トーチ工法」や、高温の溶融窯(ようゆうがま)で溶かしたアスファルトを使って防水シートを床面に密着させる「熱工法」、裏面が粘着質になったシートを張り着けて行う「冷工法」の3種類があります。

ウレタン防水工法

ウレタン防水工法は、ベランダの床面に塗料を塗って防水層を作る工法で、戸建住宅のベランダでも行われることの多い防水工事で、他には「ウレタン塗膜防水」「ウレタン防水工事」「液体防水」「防塵防水」などと呼ばれることもあります。


ウレタン防水工法にも2種類の方法が存在し、それぞれ「密着工法」と「通気緩衝工法」と呼ばれます。

「密着工法」ではウレタン防水剤などの防水専用塗料を床面に合計3回塗布しますが、1回目と2回目のあいだには補強布が敷かれ、3回目の塗装が終わったあとは、最後にトップコートを塗装して防水層の完成です。

密着工法のトップコートには外壁や屋根の断熱塗料としても有名な、日進産業の「断熱塗料ガイナ」が使われることがあります。

ガイナは真夏や真冬に室内の温度変化を抑える力を持った人気の塗料で、屋外から届く日光の熱をカットする「遮熱機能」によって外が暑くても家の中は涼しくなり、室内から暖かい空気が逃げないようにする「断熱機能」によって外が寒くても家の中は暖かくなる効果を持つ画期的な塗料です。

「通気緩衝工法」は、下地処理と下塗りのあとに通気緩衝シートを敷き詰め、ベランダ床面に接着する作業が行われます。

接着したシートは継ぎ目をテープで塞いでしっかり密封しますが、ベランダ下地からの水分を脱気させるために脱気筒を設置し、余分な水分による塗膜の劣化を防ぎます。

シートを接着したあとでウレタン防水塗料を塗布し、最後にトップコートを塗って防水層の完成です。

脱気筒の設置など細かい作業を伴う通気緩衝工法は、広いベランダや勾配がない陸屋根の屋上など、比較的面積が広い屋外スペースで採用されることの多い工法です。

2.防水工事はどれがおすすめなのか

ベランダの防水工事をしたいと思っても、工事方法の選択肢の多く、悩まれるかもしれませんが、ベランダ防水工事は施工するベランダの特徴や劣化症状によって推奨される工法が異なります。

価格重視で行うならウレタン防水工法

戸建て住宅のベランダ防水工事の中で、最も平均工事費用が安いものはウレタン防水です。

耐久防水塗料を使用すればアスファルト防水と同等の耐久性を発揮し、塗料の伸びがよく作業性も高いことから、ご自身でDIY防水工事を行うことも不可能ではありません。

ただし、塗料のみで防水層を作るため表面を均一に仕上げるのが難しく、工事期間も長くなり、誤った施工方法では耐久塗料の効果を発揮できなくなってしまいます。

そのためDIYによる防水処理は、床面の面積が狭いベランダや、10年内に防水工事が行われているベランダでの実施に留めておいた方がよいでしょう。

確実にベランダの防水性を高めるのであれば、無理にDIYに挑戦しようとせず専門の業者に依頼することをおすすめします。

確実に防水するならFRP防水

FRP防水工事やシート防水はシートで防水層を作るため、ウレタン防水などの塗料のみで作る防水層と違って表面が均一になり、比較的短い時間で作業が終わります。

工事費用はウレタン防水より割高になりますが、シート同士の継ぎ目を重ねて隙間を塞ぐことができるため、耐久シーリングを隙間に詰めなくても非常に高い防水効果と耐用年数を持たせることができます。

また、シート防水とアスファルト防水はウレタン防水よりも高い耐久年数を発揮しますが、バーナーや溶融窯などの大掛かりな機械を準備しなければならないため、ビルの屋上など広いスペースの防水で選ばれることはあっても、住宅用の小さなベランダで作業を行うのは難しく、作業そのものが行えないケースもあります。

よって、予算を投じてでも確実なベランダ防水を望むのであれば、FRP工法が最もおすすめの防水工事といえるでしょう。

さいごに

ベランダは外壁や屋根に比べると、点検や劣化を見落としがちな箇所ですが、外壁材や屋根材と同様に、常に雨や紫外線に晒されている屋外設備であることに変わりはありません。

そのため定期的な点検を行わなければ、雨漏りや構造体の腐食など建物の耐久性低下に繋がる様々な劣化症状を引き起こしかねません。

塗装業者にベランダの現地調査を頼む時は、ベランダの状態に適した防水工事の方法と、建物の耐久性に影響を与える劣化を見抜いてもらう必要があります。

豊富な施工事例を持つ防水工事施工業者であれば、防水知識が豊富な専門家が在籍している確率は高くなりますので、直近で防水工事を行ったことのある業者に見積りを依頼しましょう。