お家の外壁に触ってみたときザラザラとした感触があれば「リシン」という仕上げ材である可能性があります。

本記事では、安価で施工しやすく、通気性や美観にも優れているリシン仕上げに関する特徴・メンテナンス時の注意点についてお伝えします。

リシン仕上げの特徴

ここでは、安価で施工しやすく、通気性や美観にも優れているリシン仕上げに関する基本的な知識についてご紹介します。

リシン仕上げをした外壁とは?

リシンとは、モルタル外壁の仕上げ材として用いられている表面化粧材のことをいいます。骨材(細かく砕いた石や砂)に樹脂やセメント、着色剤などを混ぜたものを吹き付けて施工するため、表面がザラザラとした仕上がりになります。比較的安価な仕上げ材であるため、新築住宅によく使用されています。リシンによって施工された外壁は、混ぜ込まれた細かい骨材によって独特の落ち着いた外観になりますので和風住宅などとの相性が良い。耐用年数はおよそ8年程。

他の仕上げと比較

スタッコ仕上げ
合成樹脂エマルションなどにセメントや骨材(大理石や砂など)を混ぜた原料を、コテやローラー、または吹き付けによって施工した仕上げ方法。リシン仕上げに比べて厚く塗装されているため立体感のある外観になる。耐用年数はおよそ10年程。
吹きつけタイル
けい砂、寒水石、軽量骨材などの原料と樹脂を混ぜ合わせ、タイルガンという口径の大きい塗装機で吹き付けた吹きつけタイル。耐用年数は使用される樹脂によって様々。

リシン仕上げの種類

リシン吹き付け

最も一般的な施工方法で、「リシンガン」と呼ばれるガンを用いて外壁に吹き付ける手法です。安価であるため人気が高く、凹凸のある仕上がりになります。リシンを吹き付けた後に、職人がブラシや剣山のような道具を用い表面を粗く仕上げたもののことをいいます。通常の吹き付け仕上げよりも繊細で柔らかく、深みのある仕上がりになります。人の手による施工であるため職人の腕に多少なりとも左右されますが、外壁に高級感を持たせたい場合にはおすすめの仕上げ方法です。

弾性リシン

弾力性があり、リシンの弱点であるひび割れに追随する弾性リシンが近年開発されました。ただリシンはそもそも塗膜が薄いため、そこまで大きな効果が期待できるわけではありません。通常のリシンよりもすこし汚れやすくなっているというデメリットもあるため、まだまだ発展途上の仕上げ材であるといえます。

リシン仕上げのメリットは仕上がり面

透湿性・通気性が良い

リシンが新築住宅に多く使われる理由は、その価格の手軽さだけではありません。もうひとつの大きな理由として、透湿性・通気性に優れているという点が挙げられます。ではなぜ、新築住宅の外壁に透湿性が必要なのでしょうか。

日本における新築住宅の多くは、木材を主に使用して建築されています。木材の最大の天敵は水分ですので、内部に湿気がこもってしまうと早期の腐敗を招いてしまうという事態にもなりかねません。そのためモルタル外壁では内部に透湿防水シートを入れる、仕上材にはリシンなどの透湿性に優れる材料を使うなどの対策を取っています。

艶を抑えた仕上げり

モルタル外壁が多く使用されている和風住宅では、新築特有のピカピカとした外観よりも、艶を抑えた落ち着きのある仕上がりにしたいという方が多くいらっしゃいます。リシン仕上げの外壁は表面にある凹凸が太陽光を拡散させるため、新築でも艶が抑えられた仕上がりになります。

施工ごとに表情が変わる

施工するたび様々に表情を変えることも大きな特徴。粒子の大きさや配置は当然ながら毎回異なりますし、腕のある職人ならばリシン掻き落とし仕上げでお家の外壁に高級感をもたらすこともできます。

リシン仕上げのデメリットは劣化面

ひび割れしやすい

そもそも吹き付けリシンは比較的薄く施工されており、その上安価なアクリル樹脂が使用される場合が多いため耐久性は決して高くありません。耐用年数はおよそ8年程度といったところでしょう。また、下地となるモルタルの収縮に対応できないことも欠点のひとつとして挙げられます。地震などによって発生した下地の動きに追随できないので、ひび割れ(クラック)の発生は起こりやすいと言えます。一般的に幅0.3mm以下のヘアークラック、それより大きな構造クラックと呼ばれる劣化症状はモルタル外壁の宿命ですので、充填剤による補修や塗装などの定期的なメンテナンスが必要となるでしょう。

防水性に難点

横に伸びたひびが壁面を伝う雨水を全て受け止めてしまうため、内部への水の浸入のリスクが高くなってしまいます。リシン外壁のひび割れが目立つようになってきたら、一度プロによる診断を受けてみることをおすすめします。

汚れが目立つ

リシン仕上げの外壁は凹凸が多く、そこにホコリや水垢が溜まるためにどうしても汚れやすくなっています。また一般的なアクリル樹脂などのリシンには防カビ・防藻機能がついていないものが多く、大通りに面した壁や北面など湿気の多い場所では注意が必要です。カビや雨筋などの汚れが目立つと美観を損なうだけでなく、耐久性を下げてしまう要因にもなります。とくに汚れが酷い場合は、高圧洗浄などの対策を視野に入れましょう。

リシン外壁を塗り替える際の注意点

下塗り材の選定が重要

リシン仕上げの外壁を塗り替える際に最も注意しなければならないのが、下地の吸い込みが激しいという点。下地が塗料を吸い込んでしまうために、色ムラや早期の剥がれと言った状況が起きてしまいます。外壁塗装ではまず最初に下地と上塗り材を接着する「下塗り材」を塗る必要がありますが、吸い込みが激しいリシン仕上げの外壁では下塗り材の選定に注意してください。

おすすめの塗料

シーラーという下塗り材を使用して吸い込みを抑え、その上に上塗材を塗るという方法があります。ほかにも表面の凹凸模様を少し変えたい・上塗りの膜厚を均等にしたい場合には「フィラー」(=微弾性フィラー)と呼ばれる下塗り材を使用します。フィラーは比較的厚く塗装されるので、リシンの凹凸をなだらかにして波形の模様にしたり、それによって上塗り材をある程度均等な膜厚で塗ることができるようになります。またその名のとおり、僅かですが弾性がありますので、下地のひび割れに入り込むことにより充填材のような効果を発揮したり、塗膜が伸びることでひび割れからの水の進入を防ぐなどの役割も担うことができます。ただし、この弾性性能は、長期間続くものではありませんので注意してください。下地劣化が激しく、高圧洗浄後にも下地もしくは既存塗膜の脆さが気になる場合は、シーラーを先に塗り、吸い込みを抑えたあとにフィラー施工する場合もあります。

近年ではシーラーとフィラーの両方の良さを兼ね備えた「サーフェーサー」という下塗り材もあります。シーラーのように下地に浸透する機能を持ちながらも、膜厚をつけて塗装面を平滑にできるという製品になります。

マットな仕上がりを希望するなら艶消し塗料

リシン吹付けの艶を抑えたマット仕様を希望するなら、塗り替えメンテナンスの際にも艶消し塗料を選ぶと良いでしょう。モルタルが多く使用されている和風住宅は、塗りたてのピカピカとした外壁よりも艶が抑えられた落ち着きのある外壁のほうが良いと感じる方も多いので、リシンの意匠性の高さとも相性が良いです。

艶を完全に抑えることによる機能性の低下が心配な方は、3分艶など若干艶が残っているものを選んでもいいでしょう。表面の凹凸が光を拡散してくれるため、フラットな面に塗るよりも光沢は気にならなくなります。ただ塗料によっては艶消しが無いものもありますので、業者に聞いたりメーカーのHPをチェックするなどして事前に確認しておくことをおすすめします。

ひび割れをカバーする伸びる塗料

モルタル外壁の宿敵である大小さまざまなひび割れ(クラック)ですが、リシンによる塗装では覆い隠すことができず、内部への水の浸入を防ぐことができません。あなたがもしもお家を守ることを第一に考えるなら、塗替えメンテナンスの際にはひび割れに追随して伸びる「弾性塗料」を選びましょう。伸縮率の高い塗料であればひび割れを覆い隠し水の浸入をシャットアウトできます。

低汚染塗料なら汚れが気にしないでOK

お家が汚れやすい立地条件の場合(大通りや川沿いなどに面している)、リシン仕上げのメンテナンス方法として低汚染塗料による塗替えを選んでも良いでしょう。